踵(かかと)
足底腱膜炎(筋膜炎)
足底筋膜炎は、かかとの痛みの最も一般的な原因のひとつで、足裏の「足底筋膜」という組織が炎症を起こすことで発生します。
刺すような鋭い痛みが特徴で、特に朝起きて最初に立ち上がったときに強く感じることが多いです。動き始めると痛みは和らぎますが、長時間立っていたり、座った後に再び立ち上がると痛みが再発することがあります。
正確な原因は明らかになっていませんが、ランナーや肥満の方に多く見られますが、長時間の立ち仕事や足に合わない靴も原因になることがあります。
アキレス腱付着部症
アキレス腱付着部症は、アキレス腱とかかとの骨が付着する部分に繰り返し負荷がかかることで、腱と骨の付着部に変性が生じ、痛みを引き起こす疾患です。
これは腱・靭帯付着部症の一種で、進行すると肉芽形成や石灰化、骨化が起こることがあります。X線検査では、腱に突き出た骨棘(骨のトゲ)が認められることもあります。
主な原因は、かかとの骨や足の形の異常、スポーツや仕事での過度な使用、筋肉の柔軟性低下、不適切な靴の使用などが挙げられます。付着部には強い牽引力や圧迫力が繰り返し加わり、これが痛みを引き起こす要因となります。
アキレス腱炎
アキレス腱炎は、ふくらはぎの筋肉とかかとの骨をつなぐ「アキレス腱」に繰り返し負担がかかることで発生する炎症です。
この腱は、歩く、走る、ジャンプするといった動作に重要で、運動量を急に増やしたランナーや週末だけスポーツを楽しむ中高年に多く見られます。
脚の後ろやかかとの上部に痛みを感じたり、朝に圧痛やこわばりが現れるのが特徴です。リスクを高める要因として、男性や加齢、扁平足、肥満、ふくらはぎの筋肉の硬さなどが挙げられます。また、すり減ったシューズや寒い季節での運動、特定の抗菌薬の使用も影響することがあります。
アキレス腱断裂
アキレス腱断裂は、ふくらはぎの筋肉とかかとの骨をつなぐアキレス腱が部分的または完全に断裂する怪我です。主にレクリエーションスポーツを楽しむ人に多く、走る、跳ぶ、急な方向転換といった動作が原因となります。断裂時には「ブチッ」という音がすることがあり、かかとの痛みや腫れ、つま先立ちができない、足を下に押し出す動作が難しいといった症状が現れます。ただし、軽度の場合は症状が目立たないこともあります。
発症リスクは30~40歳に多く、男性に多いのが特徴です。サッカーやバスケットボール、テニスなどのスポーツ、ステロイド注射やフルオロキノロン系抗生物質の使用、肥満などもリスクを高める要因とされています。
治療には手術が一般的ですが、保存療法が効果的な場合もあります。
踵骨骨端症(シーバー病|Sever disease)
Sever病は、成長期の8~15歳に多く見られる、子どものかかとの痛みの最も一般的な原因です。特にスポーツや運動を頻繁に行う活発な子どもに多く発症し、かかとの後ろにある「骨端線(成長板)」が炎症を起こすことで痛みが生じます。
成長期の子どもには、骨の成長を助ける柔らかい「骨端線」があります。この骨端線は、ふくらはぎの筋肉とアキレス腱でつながっていますが、成長が早い時期には骨に比べて筋肉や腱が硬くなりやすい傾向があります。繰り返し走ったりジャンプしたりする動作や、足を十分にサポートしない靴の使用によってアキレス腱が骨端線を引っ張り、炎症と痛みを引き起こします。
骨棘(こつきょく)
骨の表面にカルシウムが蓄積し、新たな骨が突起状に成長したものです。
長期間、骨にストレスや摩擦が加わることで発生し、骨が自らを保護しようとして形成されます。足の筋肉や靭帯への負担が主な原因で、特にスポーツ選手や足に負荷のかかる仕事をしている人に多く見られます。
一般的には、かかとの前側や足の甲の中央部分にできやすいです。骨棘自体には痛みがありませんが、周囲の組織、特に神経に触れると痛みが生じることがあります。
Os Trigonum(三角骨)
距骨の後ろ側にある余分な骨で、胎児期に距骨の骨が完全に融合せずに残ったものです。
全人口の約10~15%に見られ、通常は症状がありません。しかし、バレエダンサーやサッカー選手のように、足首を頻繁に大きく曲げる(底屈する)動作を繰り返す人や、捻挫や外傷後に瘢痕組織ができた場合、三角骨が周囲の組織を挟むことで痛みが生じるリスクが高まります。
この状態は有痛性三角骨症候群(Posterior Ankle Impingement Syndrome, PAIS)と呼ばれます。
主な症状としては、足首を曲げたときの後方の痛み、腫れ、動きの制限などがあります。