外反母趾
外反母趾 (がいはんぼし、 バニオン)は、 足の親指の付け根部分が外側に曲がり、 親指自体が内側に傾いてしまう状態です。
これにより、足の親指の付け根に突出部ができ、痛みや炎症を引き起こすことがあります。
日常生活や歩行に支障をきたすことがあり、女性に多く見られます。
骨や筋肉のバランスが悪くなり、様々な症状を引き起こす進行性の病気で、痛みに耐えながら日々を過ごしている人も多い身近な病気です。
また、変形していても痛みがないこともあります。
外反母趾の原因
外反母趾ができるメカニズムには諸説ありますが、 正確な原因はわかっていません。
考えられる要因としては
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足の構造や骨格:扁平足や過回内など、 足の形状が原因となることがあります。
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足部へのストレスやケガ
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生まれつきの形:家族に外反母趾の方がおられると、 症状を発症しやすいです。
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不適切な靴:きつい靴、 ヒールの高い靴、 幅の狭すぎる靴が原因なのか、 それとも単に靴を履くことが外反母趾の発生を助長しているのかについては、 専門家の間でも意見が分かれています。
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その他:外反母趾は、 ある種の関節炎、 特に関節リウマチのような炎症性関節炎と関連している可能性があります。
危険因子
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性別:女性は男性よりも外反母趾を発症しやすいです。
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年齢:年齢とともにリスクが増加します。
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家族歴:家族に外反母趾の人がいるとリスクが高くなります。
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特定のスポーツや活動:長時間立つ仕事や特定のスポーツがリスクを高めることがあります。
合併症
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関節炎:親指の関節に炎症が起きることがあります。
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タコやウオノメ:足の形が変わることで圧力が集中し、 たこやまめができやすくなります。
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変形性関節症:親指の関節が変形し、 動きが制限されることがあります。
外反母趾の治療方法
治療方法には「保存療法」と「手術療法(根治手術)」があります。
「保存療法」には主として①装具療法 ②運動療法 ③靴の選定 ④投薬があり、「手術治療」では骨切り術、関節固定術などがあります。
長年の外反母趾によるお悩みや、歩けない、見た目を改善させたいという場合は、当院では日帰り手術をご提案しています。
※外反母趾手術は提携医療機関の手術室にて行います
保存療法
装具(インソール)療法
装具(インソール)とは、靴の中敷きのことです。
外反母趾の方の足に共通する傾向として、踵(かかと)が内側に倒れることで足の親指への過剰な負荷がかかりやすくなることや、足部のアーチの崩れがあります。
医療用の適切なインソールは、そういった問題を補正し、痛みの軽減や悪化を防ぎます。
当院では義肢装具士と連携し、適切なインソールを作成しています。(保険適応)
運動療法
外反母趾は足裏の筋力低下、柔軟性の低下が原因となる場合が多くあります。運動療法にて足裏足裏のアーチをアーチの低下の改善を目指します。
足趾を開いたり閉じたりする運動で足裏の筋力が高まり、外反母趾の症状悪化を予防するだけでなく歩行の安定や偏平足の予防にも繋がります。
また足の裏や足指の硬さも大きく影響するため、自宅でできるストレッチの指導も行っています。
靴の選定
適切なサイズの靴を選ぶことは、外反母趾の進行や悪化を予防するのに必須です。
万人に共通する「良い靴」はありません。高価な靴やオーダーメイドが適切とは限りません。ひとりひとりに合った靴の選び方と、足が靴の中でず れたり遊ばないように正しく履く方法を指導しています。
また、靴の摩擦や突き出た骨が靴に当たって起こる疼痛に対し、外反母趾パッドなどで靴との摩擦・圧を低減をします。
投薬
痛みを伴う関節の炎症に対し、痛み止め(非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs))などを処方する場合があります。
当院では即時の疼痛治療に加えて、インソール療法や運動療法などを併せて治療していくことを薦めています。
外科的療法(根治手術)
当院では基本的に日帰り手術を行っています。
変形が強く、疼痛がひどい外反母趾で、装具療法や運動療法などの保存的治療がうまくいかない場合には、手術療法が考慮されます。
中足骨の一部を切り取り、変形した骨の角度を変えて体重のかかるところを改善する中足骨骨切り術(ちゅうそくこつこつきりじゅつ)や遠位骨切り術(DLMO法)、MTP関節固定術など100通り以上もの術式がありますが、当院ではこれまでに培った技術を活かし、一般的なものから難易度の高い症例まで幅広く対応し、
少しでも日常生活を崩さない方法で治療ができるためのサポートを行っています。
医療の進歩で外反母趾の治療は早期に回復が見込めるようになりました。
術後は筋力が低下しないよう医療用装具をを着用していただき、早期に筋力訓練を開始して、早期の日常生活復帰を目指します。
翌日から歩行が可能ですが、従来の靴が履けるようになるには2カ月間ほどかかることが多いです。
手術で完治して活動性を取り戻すことで、今後の心身の健康、ひいては寝たきりや認知症の予防に貢献することが考えられます。
受診のタイミング
以下のような症状が見られた場合は、 専門医の受診を検討してください。
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足の痛みが続いている
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足に合う靴を見つけるのが難しい足の痛みなどの症状のほか、 動きが悪くなるなどして日常生活に支障をきたす
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自己管理や家庭での治療では改善しない場合
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足の皮膚が赤くなったり、 腫れるなど感染の恐れがある場合
予防
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適切な靴の選択:広くて快適な靴を選ぶことが重要です。
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足の運動:足の筋肉を強化し、 柔軟性を保つための運動を日常に取り入れる。
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体重管理:過度の体重は足に負担をかけるため、 適正体重を維持することが重要です。
外反母趾は適切なケアと治療により、 症状を軽減し生活の質を向上させることが可能です。早期の対処が重要ですので、 気になる症状がある場合は専門医に相談しましょう。
「こんな靴を履けるようになりたい」「また⚪︎⚪︎がしたい」の気持ちに寄り添う
当院には手術を考えられている方が多く受診されています。
痛みで子育てや仕事にも支障が出ていた方が、「手術で痛みが治まり、靴選びでおしゃれができるようになった」とのお声や、大好きだったダンスを痛みによって諦めかけていた方が「(手術によって痛みが取れたことで)また思うように踊れるようになった」との声、さらには20年以上も外反母趾で悩まれていた方からは、「足の親指に力が入るようになり、歩行時にふらつくことがなくなった」などの声をいただいています。
手術すべきか迷うような方や、自分に合った治療法が知りたい方はご相談ください。
お電話や窓口ではできる・できないの判断は難しくお答えできかねますので必ず受診の上医師にご相談ください
当院の主な検査方法
診察
問診において患者様から症状をお聞きして、医師が視診・触診にて足の骨格・形状、左右差などを観察していきます。
⚫︎普段よく履く靴や、通勤時・習い事・ウォーキングなどに使用する靴をご持参いただくとより詳しい診察が可能です
レントゲン検査
外反母趾は足部のレントゲン写真で診断します。
レントゲン検査では、立ったままの状態で撮影し(体重による負荷をかけた状態)、正面写真では母趾の外側への屈曲の程度を、側面写真ではアーチ構造の変化をとらえます。
場合によっては荷重下での胸椎、腰椎、股関節、膝関節のレントゲン検査を行うこともあります。
エコー(超音波)検査
場合によってはエコー検査を行います。
痛みの有無に関わらず、内側の状態を正しく精査していきます。
エコー検査では、滑液包の肥厚、異常血流増生、バニオン(皮下滑液包炎)の有無などを確認します。
歩容解析(Gait Anaysis)
当院では体の動作・身体構造・筋肉活動を計測装置で記録し、歩行を視覚的に分析するシステムを導入しています。
歩行時の衝撃の度合いなどの細かな検査を行い、適切な治療の提案を目指します。
外反母趾の痛み・変形は
早期治療が大切です
外反母趾は長い時間をかけて指の関節が変形していくものです。痛みや症状がない場合でも早く気付き、対処することが大切です。
早期改善や再発予防をするために普段からのケアが重要です。
また、大人だけでなく子ども外反母趾になります。変形を進行させ、重症化しないために子ども用インソールで補正することがとても大切です。
インソールは、治療の補助具として土台からアーチをサポートし、重心を正しい位置に矯正します。
当院のインソール療法は、自分に合った適切な装具(骨格補正の装具)を医師の処方せんに基づいて作製します。
手術後の治療用インソールの作成も行っており、再発を防止するための提案も行っています。